大判例

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東京地方裁判所 昭和22年(ワ)1437号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事實〕

原告は被告所有の本件土地を賃借して地上に建物を所有していたが、地上建物は昭和二十年四月十三日の戰災で燒失した。被告は右土地を昭和二十二年二月二十五日訴外李澄雲に賣渡し、同人をして右地上に建物を建築させた。この結果原告は事實上借地權を行使出來ぬこととなり借地權の價格(四十八坪二合五勺坪、當三千五百圓合計十六萬八千八百七十五圓)相當の損害を蒙るに至つた。以上の事實關係に基き、被告は原告に賃貸人としての債務不履行又は履行不能による損害賠償義務、若くは不法行爲による損害賠償義務ありと主張した。

被告は(一)原告所有の建物は昭和二十年三月第六次強制疎開で除去されたもので、その際原告は敷地の借地權を抛棄した。(二)假に借地權抛棄の事實がないとすれば原告は右借地權を被告以外の第三者にも對抗できる筈で被告は土地の賣却により既に土地の賃貸人としての地位を脱退した。被告が所有土地を賣却して法律上賃貸人でなくなつた事をもつて、債務不履行ということはできない。又原告の賃借權の行使を不能とする事實も存しないし、況んや被告に不法行爲上の責任はないと爭つた。

原告は強制疎開の事實を否認した。

〔判斷〕

裁判所は證據によつて本件土地が第六次強制疎開地の指定を受けたことを認定したが、右指定の際原告の借地權抛棄がなされたとの被告の抗辯を排斥した後、被告の(二)の抗辯を採用し、原告の請求を棄却した。第六次強制疎開地の借地權が消滅するか否かの點に關する判決要旨をつぎに摘録する。

「東京都における第六次疎開事業においては、建築物の除却を命ずることに伴う權利者の損失補償の方法として、第五次疎開事業に至るまでと異り、建物そのものの價格と借地權のそれとを區別しないで一括して、補償金を交付する方式を採り、概して既存の借地權を消滅させ都に借地權を取得する方針に出たことは公知の事實である。乙第二號證(區長作成部分の成立に爭がないから全部眞正に成立したものと認める)及び前示區役所の調査囑託回答書はこの趣旨を肯定している。しかし、防空目的の疎開事業の根據法であつた防空法の規定によれば、借地權そのものは必ずしも建物の除却と不可分でないことはその規定上明らかであつて、借地權の處分は一應任意契約によるものとされ、いわゆる強制疎開に際し、建物を除却する外さらに一歩を進めて土地の權利關係に觸れるまでに至らなかつた場合の存することもまた顯著な事實であつて、罹災都市借地借家臨時處理法の規定も建物の除却と同時に借地權の消滅した場合と、そうでない場合と兩者存することを前提として立案されている。さて本件においては證人――の各證言によれば原告はその所有建物當時他人に賃貸中であつたの除却されたことさえ知らないで罹災燒失したものと信じていたことがうかゞわれるし、また前示區役所の調査囑託回答書によれば、原告は建物疎開補償金の請求をしておらないこと明かであるからさきに認定した原告所有建物除却實施にあたり當局においてその敷地の借地權抛棄を求めまたは原告から借地權の抛棄書を當該官署に差入れることがなかつたように推認される。

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